A.学部学科の設置の手続きにおいて「認可」は、自大学にない新たな学位の種類や分野の変更を伴う場合に必要となり、教員審査も含めた厳格な審査が行われます。一方「届出」は既存の学位の範囲内で可能で、審査の負担が大幅に軽減されます。認可は新市場開拓に有利ですが、届出はリスクを抑えて迅速に学生募集を開始できる点が異なります。
1. 「認可」と「届出」の境界線となる基準
大学が新たな学部や学科を設置する際、それが「認可」になるか「届出」で済むかの大きな判断基準は、「学位の分野(文学関係、工学関係など)」の変更を伴うかどうかです。新設する組織が、現在その大学で授与していない新しい分野の学位を授与する場合は、文部科学大臣の「認可」が必要です。一方、既存組織と同一の学位の種類・分野の範囲内で設置する場合は「届出」となります。ただし、この判断は大学側の自己判断ではなく、大学設置分科会運営委員会への「事前相談」に諮り、客観的な確認を受ける仕組みとなっています。
2. 審査内容や必要な手続き面での違い
認可と届出では、手続きの手間や審査の厳格さが大きく異なります。「認可申請」の場合、大学設置・学校法人審議会において、設置計画の妥当性から施設・設備、学生確保の見通しまで厳しい審査を受けます。特に、就任予定の教員一人ひとりの業績等を詳細に確認する「教員資格審査」が必須となり、教員個人調書の作成など莫大な準備作業が求められます。一方、「届出」による設置の場合、認可申請に準じた基本計画書等は必要ですが、厳しい教員審査の省略が可能となる場合があるため、教員個人調書の提出が不要になるなど、事務的負担が大幅に軽減されるという特徴があります。
3. 学生募集を開始できるタイミングの違い
大学経営において重要な「学生募集(募集要項の配付、出願受付など)の開始時期」にも決定的な違いがあります。「認可」の場合、国からの認可書が正式に到着するまでは、学生募集やそれに類する事前活動は一切行うことができません。対して「届出」の場合、運営委員会の「事前相談」を経て「届出設置可」と判定されていれば、文部科学省へ届出書を提出したと同時に学生募集を開始できます。また、事前相談を経ていない場合でも、届出後原則60日が経過すれば学生募集が可能となります。迅速に募集活動を展開したい場合は、届出制度の仕組みが非常に有利に働きます。
4. 大学経営における戦略的な使い分け
認可と届出のどちらの手法をとるかは、大学の経営戦略に直結します。「認可」による新設は、全く新しい学位分野に進出できるため、新たな受験生層の開拓や大学のブランド力向上など、大きなリターンが期待できます。しかし、新分野の教員招聘コストの増加や不認可のリスクも伴います。「届出」は、既存の学位分野の範囲内で既存リソースを活用しつつ、社会のニーズに合わせて学部・学科を再編できるため、低リスクかつスピーディな展開が可能です。ただし、革新的な新規市場へのアプローチとしては限界があり、学内での学部間競合リスクも考慮する必要があります。
【船井総研の提言】
大学の改革で「認可」と「届出」のどちらを選択するかは、大学の将来を左右する重要な経営判断です。認可で新市場を開拓するか、届出で強みを活かし低リスクで改組するか、慎重な検討が求められます。自学の特色と中長期的な事業戦略に基づいた的確な方針決定が、鍵となります。

