A.日本語学校の運営自体に強制的な「認可」は不要で、独自のスクール開設は自由です。ただし、在留資格「留学」の留学生を受け入れるためには、文部科学大臣による「認定(旧法の告示に相当)」を受けることが法的に必須であり、実務上は「認定」という名の認可手続きが不可欠です。
1. 法律上の原則:「設置の自由」と「認定」の任意性
新法における最大の特徴は、日本語学校という語学スクールを開設すること自体には、行政による強制的な「認可」は必要ないという点です。つまり、国内の企業や個人が任意で外国人向けの日本語教室やスクールを立ち上げてビジネスを行うことは法律上自由です。しかし、国(文部科学大臣)から「適正かつ確実に日本語教育を実施できる機関」として公的なお墨付きを得るための制度として、新たに「認定」の仕組みが創設されました。
2. 留学生(在留資格「留学」)受け入れにおける「認定」の義務化
スクールの開設自体は自由である一方、「海外から在留資格(ビザ)『留学』を取得して来日する留学生」を受け入れるためには、文部科学大臣の「認定」を受けることが法的要件となります 。すでに運営している法務省告示機関には5年間の移行措置(令和11年3月31日まで)が設けられていますが、それ以降も途切れなく留学生を受け入れるためには、令和10年度(2028年度)までに認定を取得しなければなりません 。 認定を受けない学校は留学生ビザの発給対象校(留学課程)として認められなくなるため 、一般的な「留学生をターゲットとした日本語学校」を経営する場合、実務的にはこの認定取得が「事実上の認可手続き」として機能しています。
3. 「留学」「就労」「生活」に分かれた3つの認定課程
新法では学校がターゲットとする外国人の目的(在留資格)に応じて、以下の3つの教育課程ごとに審査・認定が行われます 。
- ①「留学のための課程」:大学進学や就職等を目指す長期留学生向け 。
- ②「就労のための課程」:育成就労向け。
- ③「生活のための課程」:地域に暮らす定住者や配偶者向け 。
経営戦略に合わせていずれか、もしくは複数の課程で認定を申請します 。 特に「留学」課程では、カリキュラムの年間授業期間(原則35週以上)や授業時数(1年間につき760単位時間以上、1週当たり20単位時間以上) 、教員配置の基準が最も厳格に定められています 。
4. 国家資格「登録日本語教員」の配置義務と厳格な審査
文部科学省の「認定」を維持するための最大のハードルが、教員の資格要件です。新法下における認定日本語教育機関では、教壇に立つすべての教員(常勤・非常勤問わず)が国家資格である「登録日本語教員」の資格を保有していることが原則義務付けられています 。(※法施行後5年間は、現行の教員要件を満たす者等も経過措置として勤務可能です) 。 また、経営母体の財務基盤の健全性 や、過去に入管法や労働法等に違反していないか(欠格事由への非該当) なども厳しく審査されます。書類の不備や説明の矛盾があれば不認定(不可)や申請取り下げとなるため 、参入障壁は以前よりも大幅に高くなっています。
5. 認定を取得することによる経営上の3大メリット
厳しい基準をクリアして文部科学大臣の認定を取得すると、経営面で以下の大きなメリットを享受できます。
- ① 在留資格「留学」の対象校となり、海外からの学生募集が公式に可能になる。
- ② 育成就労制度への移行等に伴い、外国人労働者の日本語研修を企業から直接受注(BtoB)しやすくなる。
- ③ 文部科学省のポータルサイトに多言語で公式掲載され、国内外への社会的信用が飛躍的に向上する。
このように、新法下では認定マークの有無が、学校のブランド力と経営の安定性を分かつ最大の指標となります。
まとめ:船井総研の提言
新法の施行に伴い、「認定を受けない(受けられない)日本語学校」は、今後ますます激化する人材獲得競争において完全に淘汰されていく可能性が非常に高いです。特にスタートが迫る「育成就労制度」など、就労を目的とした外国人材の日本語教育市場を狙うのであれば、文科省の認定という「公的価値」は必須の参入切符です。法規制に完全に準拠したガバナンスと財務基盤を早期に整え、いち早く認定を取得することこそが、新法時代を生き抜く唯一の王道経営戦略です。

